Profile
画家、写真家。東京在住。
絵画制作においては「人間と機械」を主題とし、
主にケント紙とミリペンを用いて制作。
写真制作においては「時空と連続体」を主題とし、
主にフィルムカメラとiPhoneを用いて制作。
Artist Statement
〈 人間と機械 〉を主題に制作。
人格や感情、社会と機械の相互作用を探究する。
Key Phrase
二年ごとに制作の指針となるキーフレーズを設定。
01. 2020–2021:〈 人間に擬態する機械人間 〉
定型的に発達する人間と、非定型的に発達する人間との関係を考察。
・解説
現代社会における神経学的少数派は、神経学的多数派によって形成された支配的文化の中で周縁化され、十分に社会適応できない状況に置かれている。
そのため、多くの少数派は、自己の特性を覆い隠し、多数派の行動様式や言語、感情表現を模倣することで、社会的ハンディキャップの克服を試みる。このような擬態的行動による適応は、当人の精神的負担を著しく増大させ、二次的な障害を引き起こすリスクを高める。
しかし、本来このような困難の原因は、個人の側にではなく、特定の神経特性を基準として構築された社会構造の側にある。神経の多様性は人格の本質に関わるものであるため、それを一方的に抑圧しなければ生きられない社会は、明確に差別的であり、非人道的な構造を孕んでいる。
この、非定型的に発達した人間が環境に適応しようとする現象は、外的要請に応じて自己を最適化するアルゴリズム的な過程と類似しており、機械のような構造を帯びる。
そこで、このような擬態的行動を〈人間に擬態する機械人間〉と捉えることで、神経多様性をめぐる現代社会の不均衡を可視化し、同時に「人間性とは何か」という根源的な問いを、制作を通して探究する。
02. 2022–2023:〈 失われる人間性 〉
社会構造への過剰適応を示す〈 機械化する人間 〉と、科学技術の進歩によって〈 人間化する機械 〉との関係を考察。
・解説
大規模定住社会から始まった社会構造の複雑化は、産業革命以降、加速度的に進行し、人間はますます合理化を志向するようになった。それは、複雑化した社会を生き抜くための、生存戦略としての学習的適応である。
しかし、人間と機械の特性は明確に異なる。それは、端的に言えば、人間の特性は偶発性にあり、機械の特性は計画性にある、ということである。
この対比において、社会構造への過剰適応によって人間性を失いゆく人間を〈機械化する人間〉と呼び、科学技術の進歩によって人間的特性を獲得しようとする機械を〈人間化する機械〉と呼ぶ。
このような状況の中で、〈失われる人間性〉の構造を可視化し、〈機械化する人間〉と〈人間化する機械〉との関係を、制作を通して探究する。
03. 2024–2025:〈 人間の流体性 〉
人間の流動的な側面と、再構築される記憶や人格、自己意識について考察。
・解説
生命は、静的なシステムではなく、情報の交換によって秩序を維持する動的なシステムである。代謝活動により個体を構成する分子は一定の周期で置換されるが、全体の構造は安定して保たれる。したがって、生命とは固定的・機械的な構造として理解するものではなく、情報の流れの中で持続する流動的な秩序として理解すべきものである。
この枠組みは、精神的な現象にも適用できる。例えば、記憶は固定的に保存されるものではなく、想起のたびに神経回路が編成される再構築的なプロセスである。また、人格は不変的な心理的特性ではなく、社会的文脈に応じて変動する可変的な構造である。このように、記憶や人格などの精神的現象も、情報の流れの中で再構築される動的な現象である。
この観点からすれば、自己意識とは恒常的な実体ではなく、物理的な相互作用によって一時的に形成される情報構造であると理解できる。〈人間の流体性〉とは、自己意識を情報過程として捉えた際に観察される、動的な生成プロセスのことであり、この構造についての探求と可視化が、本期の制作目的である。
04. 2026–2027:〈 人類代の終り 〉
水平化する人間の価値、インスタントな生命観、分散する人類種について考察。
・解説
人間の認知や情動は、神経信号の電気的振動や化学的伝達の相互作用に基づいて形成される。外界の刺激は受容体を介して電気信号へと変換され、中枢神経で処理される。このとき、神経系のリズムは、音楽・形態・言語などの外的刺激に内在する周期構造と共振し、認知判断や感情反応の基盤を形成する。この点において、人間の精神的活動は、外界の構造的なリズムと神経系のリズムの共振現象として理解できる。
また、現代社会においては、社会的な情報ネットワークの発展により、個人の神経リズムと社会的な情報ネットワークとの間にも構造的な相似性が生じている。社会的情報ネットワークにおける情報の相互作用は、神経回路における信号伝達と同様に、反復や同期、拡散といったパターンを示す。したがって、人間社会全体を、一種のマクロ的な神経系として捉えることが可能である。
この構造的な類比を拡張すると、人間・社会・宇宙を貫く情報の流動性は、フラクタル的な階層構造をもつ自己相似的共振体系として理解できる。このような視点において、「人間的なるもの」は、もはや有機的な身体に限定されず、情報の振動パターンとして存在する。私は、このような存在形態の転換期を〈人類代の終り〉と呼ぶ。それは、人類の消滅を意味するのではなく、人間中心主義的な枠組みの終焉を意味する。
本期の制作では、ミリペンによる描線の累積や律動的な反復を通して、この「波動的な存在構造」を視覚化する。そして、〈人類代の終り〉における新しい人間像──分散的かつ共振的存在としての人間──を提示する。
使用画材の説明
制作にはミリペンを用いる。その理由は主に二つある。
一つ目の理由は、ミリペンによる描画行為が〈人間と機械〉の関係を視覚的に象徴するためである。ミリペンは、産業革命以降に発明された筆記具であり、均質な線を安定して描くことを目的としている。
産業革命以前の絵筆による「人間的な描画」と比較すると、ミリペンは機械的な安定性を志向する道具と言える。それは〈機械化する人間〉の手の象徴的な原型でありながら、均一な線を志向する過程で生じる微かな手の震えや誤差を避けることはできない。
この微かなノイズを含む描画行為こそ、近現代における人間の偶発性と機械化志向とのせめぎ合いを体現している。すなわち、ミリペンによる描画行為そのものが、人間と機械の関係性を象徴しているのである。
二つ目の理由は、ミリペンによる描線が不可逆的な構造性の隠喩として機能するためである。ミリペンによって描画された線は消去できず、その痕跡は画面上に恒久的に残る。この不可逆性が、行為の累積によって構築される記憶や人格の構造のメタファーとして機能する。
このように、ミリペンによる描線は単なる観察再現や造形要素ではなく、私の思考運動の痕跡として現れ、描画行為それ自体が主題の構造を象徴しているのである。
Biography
2020
・AAA Gallery「スチームパンク〜まわる歯車〜展」
・MIRAIE Gallery「第11回 感性の息吹展」
・東京ビッグサイト「Design Festa vol.52」巨大ライブペイント
2021
・AAA Gallery「ペン画の世界展〜第Ⅷ画〜」
・東京ビッグサイト「Design Festa vol.53」ライブペイント
・Boji Gallery「Decorate the cover展」
・Dance Studio WAAAPS「FUDE ROCK」準優勝
・東京ビッグサイト「Design Festa vol.54」ライブペイント
2022
・Boji Gallery「みんなの年賀状展」
・Boji Gallery「CHANGE わたしたちの近未来展」visual
・渋谷 UNDER DEER Lounge「FUDE ROCK 2」2on2優勝
・Boji Gallery「Recommend the 家電展」
・Design Festa Gallery「Cells-illustration-vol.32」
・下北線路街 空き地 「笑う門出に春来たるッ」
・東京ビッグサイト「Design Festa vol.55」ボジキャラバン
・Boji Gallery「TWIN展」
・バトゥール東京 起業記念パーティ ライブペイント
・渋谷 Contact「FUDE ROCK 3」敗者展 1位
・コミュニティスペース&ギャラリー山本屋又右衛門「アゲアゲ☆ライブペインターズ vol.2」
・Boji Gallery「早く人間になりたい!」個展
・Gallery 螺旋「最愛なるご主人様」
・Boji Gallery「The shade of black light arts show」
・東京ビッグサイト「Design Festa vol.56」ライブペイント
・登戸・遊園ミライノバ「のぼりと商店」
・東中野ALT_SPEAKER「笑う門出に冬来たるッ」
・Gallery ARTIST GUILD「才能が弾ける音がした。」
2023
・代々木公園 野外ステージ「FUDE ROCK 4 東京予選」敗者展 3位
・Design Festa Gallery「冨岡理森×ミケタ 2人展 “て”」
・ゆうゆう高円寺南館「余寒を蹴飛ばせ!絵描きバトル」主催
・Design Festa Gallery「転んで光った」MINI個展
・Design Festa Gallery「冨岡理森×ミケタ 2人展 “human-oid”」
・Design Festa Gallery「冨岡理森×幹夫800 MINI 2人展 “ひかり”」
・東京ビッグサイト「Design Festa vol.58」物販
・STORIES TOKYO「CINEMA STORIES TOKYO vol.1」
・STORIES TOKYO「CINEMA STORIES TOKYO vol.2」
2024
・Design Festa Gallery「NARABETEMITA」コラボゲスト
・Design Festa Gallery「ただ、そっとしておいて」
・Design Festa Gallery「肯定の過剰摂取」
・Design Festa Gallery「律動する色彩」
・Design Festa Gallery「爆発的膨張」
・Design Festa Gallery「冨岡理森×幹夫800 2人展 “常夜灯”」
・Design Festa Gallery「存在の濃淡」個展
・Design Festa Gallery「溶けて光って」個展
・STUDIO SOUKO 450「Sweet spot party」
・流山おおたかの森S・C「筆ロックチャレンジinおおたかの森」ライブペイント
・Design Festa Gallery「冨岡理森×あんちゃーりー 2人展 “あやふや好奇心”」
2025
・Design Festa Gallery「人間機械論」
・Design Festa Gallery「ミケタキカク vol.8 黒×? 第4弾」
・Design Festa Gallery「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
・Design Festa Gallery「人間と機械の関係について」
